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2006年11月27日 (月)

Residual Life - 残存寿命

以前、「残存寿命の読めないマシンに人は乗せられない」と書い事があったが、はからずもその恐ろしさを昨日の桶川の走行会で自分で実証する事になってしまった。

残存寿命=Residual Lifeとは、通常メーカーなどで耐久試験を終えた部品が、後どのぐらいテストを続けると疲労破壊を起こすか、文字通り残された寿命の意味で使う言葉だ。

今回は数日前から体調が優れず、予定していた4アイテムのうちダートセクションの操縦性に関係する2アイテムに絞ってテストすることに。今回は自分で運転出来る体調ではなかったのでDトラ2台を積み込み、元同僚のH先生に運転してもらって桶川を目指した。
H先生はメカニック経験が長く、ロード、ドラッグレース、最高速競技などライダーとしてのキャリアも豊富な方で、今回のKei's Dトラ本番車も腰下を手伝ってもらっている。今回はH先生、モタード初体験なのでノーマル猫足車にテスト部品有無両方で乗ってもらい、新鮮な目でテスト部品のコメントをして頂くようお願いした。

こちらは本番車のフロントをセッティング変更してオフとターマックのバランスをテスト。本当はオイルも調合し直したかったが今回は間に合わず、とりあえずその他で姿勢バランスのチェックのみ。
ノーマル車のテスト部品は「ダートでの安心感が出る」とのコメントで一安心。自分で乗ってみてもDトラ特有のコーナー入り口でフロントが巻き込んでコケそうな恐さが薄らいでいるのでまずは合格。後は取り付け方法の煮詰めのみ。
本番車の方も細かいストロークスピードの話は置いておいてダートとターマックでのコーナリング姿勢のバランスは悪くなさそうだ。ダンピングについてはバルビングを変えたサスユニットのテストが今回は間に合わなかったので後日このユニットのテストと同時に調合を変えたオイルを試すことにする。
極低速のダート区間入り口で2回ほど「ボテ」とこけたのは若干固めのオイルを足したにも関わらず圧減衰を抜いておかなかったのでタイヤが押されてしまったのだろう。

で、「それ」が起きたのは最終セッション。今回はダートでの挙動確認が目的だったのでダートは少しペースを上げ、ターマック区間はスロットルを開けず、皆に先に行って貰いながらコーナーの車体姿勢だけをチェックしていた....つもりだったが後ろを見るとただいま急成長株、プレストさんのところの「あっち」選手が。これは自分のライダーとしてのベンチマークのためにも付いていかなきゃとペースを上げてしばらくしたその瞬間!...
アッという間にアスファルトの上を滑っていた。マシンも音を立てて自分のはるか前を滑っている。この転び方は普通ではない。すぐにマシンに駆けよって再始動しながらマーシャルの方に路面に何か異物がないか確認をお願いする。
マシンを脇に寄せエンジンを再始動するとエンジンの下から何かがたれている。良く見ると冷却水だ。それも転倒のダメージとかではなくクランクケースの合い面から流れている。その時マーシャルの方が戻ってきて、この周回のダート区間から自分のマシンで冷却水の漏れが始まっており、運悪くこのコーナーで自分の流した水に乗ってしまったようだと言う。納得。他に巻き込まれた人などいないか聞くとそれはないとの事なので一安心。

走行時間終了後、マシンを押して戻りH先生に「ケースから出た水に乗っちゃったよ」というと「あそこって新品部品間に合わなくってそのまま組んだところだよ。」そうだった。エンジンを組む時に部品の手配もれがあってやむなく二人で相談してそのまま組んだ箇所だった。組んだ時点で残存寿命はあまり残っておらず、たまたまここで寿命が尽きたということか。

帰り道、H先生ともう一度他に残存寿命の読めない部品は残っていないか洗い出し、使用時間のわからないコンロッドベアリングとウォーターポンプ周りは全て新品にし、あらためて使用時間を管理するようにした。原因がわかれば後は的確な対処をすれば良いだけの事。こういうときは私もH先生も結構平然としている。

通常、金属はかかる力が増えると二次曲線的に疲労破壊までの寿命が短くなる。各部品に十分な寿命を見込んである市販車でもレース用にすると極端に寿命が短くなる為、通常は新品からの使用時間を管理し、ある時間使用したら交換する。たとえば以前スーパーバイクで使用していたGSX-Rの場合寿命は10時間ごとのオーバーホールだったし、今走らせているRD400の場合は1時間毎だ。今回も気をつけてはいたが、準備期間の短かかったプレッシャーかMOTO3マシンを甘くみていたか、いずれにしても判断の甘さから痛いしっぺ返しを食らってしまった。だれも巻き込まず、マシンも人もダメージがなかったのが不幸中の幸いだ。

今回は自分の、しかもコース上の転倒だったからまだ良いが、自チームのライダーのマシンでは万に一つもこんなことがあってはならない。これが峠道だったら対向車に踏まれて命を落としていたかも知れない。
寿命管理の大切さをしっかりと胸に刻み込む事になった一日だった。

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2006年11月 9日 (木)

来年は...

Dsc00491  今まで6年に渡って毎戦進化しながら戦ってきたRD400。もしかしたら来年はこいつのレースはお休みするかもしれない。

このレースをはじめる為に転職。いつもレースが終わったその日から問題点の抽出、分析、対策案立案、対策部品の設計計算、図面作成、手配と予算組み。ほとんど全てが自分の設計によるワンオフパーツなので部品がそろう頃にはもう次のレース直前といった状態が続いてきた。

今年はtatsuyaさんと組んですばらしい結果を残せたと思っているが、まだ彼の力を100%出し切れるマシンではない。やる事はまだ残っている。

ただ今年はモタードと並行して行った為、モタードの本番車完成が最終戦までずれ込んでしまった。

来年は今年のデータを元に、モタードマシンを煮詰めてみようと思っている。となるとやはり中途半端にRDに手をかけるのはこのRDに失礼だ。

今までこのRDには100%の力を注入してきたし、自分のモチベーションが上がらない時にはモチベーションを最大に持っていくまで触らないようにしていた。又このRD、エンジンやサスのスペアパーツは山ほど持っていくが、外装部品のスペアや補修道具は一切持って行かない。それはほとんどワンオフパーツというのも理由ではあるが、

「絶対に転倒させず無事に帰る」

「転倒痕のあるマシンをグリッドには並べない。転倒痕=車体のゆがみ=危険。また汚いマシンをグリッドに並べるのは協力してくれた方々、手伝いに来てくれた方々に失礼にあたる」

「ライダーには80%の力で安全に、無事にレースを楽しんでもらう。80%の力で勝てるマシンを作るのはメカニックの責任」

そして何より、「このRDには寿命の尽きるまで転倒なく無事走りきって、静かな余生を送って欲しい」との願いと覚悟の表れだからだ。

だから今年はまずモタードに全力投球。その後落ち着いたところでもう一度このRDとしっかり向き合って見たいと思う、これは自分のライフワークだから。

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